vol.07

「NOT A HOTELの熱量が、創作の源になっています」

横山克さん

ドラマ、アニメ、映画など幅広い映像作品の音楽を手がける作曲家の横山克さん。映画『ちはやふる』、NHK連続テレビ小説『わろてんか』、ドラマ『最愛』、アニメ『四月は君の嘘』『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ』、最近では『ザ・ロイヤルファミリー』やNetflix映画『10DANCE』など、数々の作品で耳にする音楽を生み出してきた。年間の約25%を海外で過ごし、国内外を飛び回りながら創作を続ける横山さんに、クリエイターならではのNOT A HOTELの活用法を聞いた。

感性を守るため、景色を更新し続ける

横山さんが作曲家として大切にしているのは、監督や脚本家、プロデューサーが作品で伝えたいことを音楽で「炙り出す」こと。セリフや演技、演出だけでは表現しきれない部分を、音楽で補完する。 「何十年も仕事をやっていると、技術的に曲をまとめることは、息をするように自然にできるようになります。でも大事なのはそこじゃなくて、何が必要なのかを本質的に考え抜くことなんです」

そんな横山さんの日常は、まさに止まることを知らない。周囲からは「サメみたい」と言われるほど、常に動き続け、年間の約25%は海外にも滞在する。クリエイターにとってオン・オフという概念はない。息をしている間、寝ている間も含めて、常に何かを作る事を考え続けている。だからこそ、刺激を受け続けることが重要なのだ。 「コロナ禍でどこにも行けなかった時期、自分の感性が退化していくのを実感したんです。それ以来、意図的に過ごす場所や見える景色を変えていくようにしています」 長野県出身の横山さんは、若い頃は田舎に対してネガティブな感情を抱いていたという。しかし、母校の校歌制作の仕事などを通じて地元文化の深さに触れ、また海外経験を重ねるほど日本の文化的な厚みを痛感するようになった。地方の価値を見つめ直し、各土地が持つ歴史や文化への関心が、今のクリエイティブにも活きている。

誰かの狂気が連鎖する。「暴走」し続けることの価値

NOT A HOTELの存在は3〜4年前から知っていたが、当初は「別世界」だと思っていたという。しかし物件の説明を受け、相互利用の仕組みなどにも併せて魅力を感じ、2〜3日で購入を即決した。実際に滞在してみて、横山さんが最も共感したのは、NOT A HOTELの建築やクリエイティブに宿る「暴走」だった。

「映画制作においても、監督や脚本家、音楽家、役者――誰かが狂気的なまでに没頭していると、その熱に当てられるように、他のクリエイターたちの感性にも次々と火がついていく。そうやって作られる作品は、必ず良いものになるんです。NOT A HOTELにも、それと同じ『突き抜けた熱量』を感じています。 例えば、KITAKARUZAWAの『IRORI』の高い窓。運営の側の方もどう掃除するか悩んでしまうような仕様でありながら、なんとか解決しようという姿勢を感じます。映画制作も同じで、100人いたら100人が賛成するようなお行儀よいものよりも、誰かがやりたいことをひたすらに貫いたほうが、きっと面白いものになりますよね。NASUのあの大きな建築や温水プール、家具や壁の質感、本のセレクション、アメニティのタグに至るまで。すべてが『やりすぎ』で、『誰がここまで求めてるの?』と思うようなことを、ひたすらやり続けている。その徹底ぶりが素晴らしいです」

滞在を重ねるうちに、刺激の種類が変化していった。音楽で例えるなら、最初の鋭い「アタック」から、じわじわと心地よさが持続する「サスティン」へ。壁の質感や、NASUのコールテン鋼の外壁が経年変化で錆びていく様子にも、計算された美しさを感じている。横山さんのNOT A HOTELでの過ごし方は、まさにクリエイターならでは。滞在中もオンオフはなく、まずコンピューターと折りたたみ式のキーボードを広げて仕事環境を整える。 「景色が変わっても、やることは同じ。でもその切り替えが、インターバルゼロでできるのが最高なんです。仕事の後はすぐにサウナやプールに入れる。北軽井沢の雪景色や、みなかみの霧がかかった山々、青島の目の前に広がる海。自然の風景そのものが美しくて、雨の日でさえ幻想的に感じます」

拠点増加により、拡張し続ける興味

所有するハウスだけでなく、他の拠点も利用できる相互利用システム。その便利さは当然として、横山さんが最も価値を感じているのは、拠点が次々増えていくことだという。 「凄いスピードで新しい拠点が増えることで、所有する我々も興味の対象が自動的に拡張されている気分です。その土地の文化を調べることが、自分のクリエイティブに反映される。北軽井沢や福岡での滞在を通じて、その場所の面白さを発見するきっかけをもらいました」 滞在を重ねるうち、NOT A HOTELは「もう一つの家」のように感じられるようになった。ネットスーパーで買った食材を事前にハウスに送り、キッチンで自炊する。自分の会社のスタッフにも福利厚生として利用してもらっており、チームメンバーの家族コミュニティ形成にも役立っている。年間50泊を所有しているが、すでに年の25%は海外にいるのに加え、NOT A HOTELが50泊。「さてどうしよう」と笑いながらも、この生活を心から楽しんでいる様子だ。

移動し続けることで感性を磨き、景色を変えながら創作し続けるクリエイターにとって、NOT A HOTELは単なる滞在先ではない。それは、自分の興味や可能性を自動的に拡張してくれる、かけがえのないパートナーなのだ。

STAFF

Text: Yuji Kuramochi

Photo: Ichi Nakamura (Nowhere)

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