EPISODE 10滞在するお客さまへ
想像を超えた感動体験を
Customer Support河野 枝里
NOT A HOTELでの滞在をより特別な体験にーーその実現に欠かせない存在が、チャットコンシェルジュだ。お客さまからのご要望や困りごとを最初に受け取る役目を果たし、必要があれば現地の運営スタッフと連携して応えていく。
このチャットコンシェルジュを運用するCS(カスタマーサポート)チームを牽引するのが河野枝里だ。河野はこれまでのキャリアで2度、CSの立ち上げに携わった経験を持つ、いわばこの道のスペシャリスト。しかし、NOT A HOTELがもっとも困難が伴ったと河野は話す。一体どんな超えるべき壁があったのだろうかーー約1年に及ぶ激動の日々を振り返る。
“3度目のCS立ち上げは余裕だと思っていた”
ーCS組織において何も定まっていない状況のなか、短期間でチームや運用をつくりあげなければならない開業当時を振り返っていかがですか。
河野:やり切ったというか、もうやるしか選択肢がなかったんですよね。埋めなければならないタスクを洗い出し、ひたすら捌いていたら、いつの間にか開業していたというのが率直な感覚です。正直、業務に入る前は「CSの立ち上げなんて余裕」くらいに思っていました。立ち上げに関わるのは3度目になるので。さすがにもう手慣れたものだろうと。ですが、その想定は間違っていて(笑)。
ー想定外のことが多かった?
河野:NOT A HOTELは単なる別荘ではなく、独自のビジネスモデルだからこその難しさがあります。これまでと同じCSという職種ではあるものの、課題の種類がまったく違ったんです。特にチャットコンシェルジュは、メールよりも早いレスポンスを期待されるし、短いテキストのなかに必要な要素を詰め込まないといけない。それにチャットの対応と現地のサービススタッフの対応に齟齬が生じるといけないから、連携も密にとる必要もある。想定以上にマルチタスクが求められました。
あと、立ち上げ当時はホテル業界出身者がいなくて運用イメージが全く出来なかったことも大変でしたね。お客様にとってなにが必要なのか、どういう滞在になると心地よいのかをユーザー目線で考えながら、先の先まで想像し、意思決定をしていくのですが、いろんなことが日々変わっていくのでマニュアル化している余裕もなくて…当時は必死でしたね。
期待値調整だけでは、感動するような体験をつくることはできない
ー立ち上げの初期は、お客さまからのご要望の全てにお応えできない苦悩もあったかと思います。
河野:初期は運用ルールをきっちり定めていたんです。“これはできて、これはできない”という線引きをしていました。管理システムの制約もあるし、安全に運用するためのリスクヘッジもしたかったーー難しいご要望についてはお断りすることが頻繁にありましたが、本意ではありませんでした。
ーそれから急スピードで運用も整いはじめ、今ではほぼ全てのご要望に応えていますよね。何かきっかけがあったのでしょうか。
河野:「できることは全部やる、できるのにやらないのはなぜ?」と林さん(NOT A HOTEL MANAGEMENT CEXO)から言われたときがあって。その瞬間は「今回だけできても、次できるかわからない」と不安に思ってしまっていたのですが、NOT A HOTELが提供したいのは圧倒的な感動体験であり、“そこそこの感動”じゃダメなんだって気づかされたんです。それからは「私たちが手を動かせば叶えられることは、なんでもやろうと」考えを切り替えるようになりましたね。
ー実際にお客さまからの反応はいかがですか。
河野:NOT A HOTEL AOSHIMAの開業から約1年が経ちましたが、とても良いフィードバックをいただいています。なかには「ここまでしてくれるとは思わなかった」という感想をいただくことも少なくありません。でもそれはCSチームだけの成果ではなく、建築やソフトウェア、運営サービスなど、体験をつくるすべての方のおかげだと思っています。
ーでは最後に、2024年の“超えていきたい常識”を教えてください。
河野:まさに“チャットコンシェルジュの常識を超えていく”ですね。現在はチャット対応のほとんどを有人で行なっているのですが、今後はAIも活用するかたちで満足度を高めていきたいと考えています。というのも、きちんと対処されるのであれば、お客さまにとっては有人なのかAIなのかはどちらでもいいと思うんです。それにUI/UXが向上して、AIが使いやすくなれば、有人対応がいらない世界になるかもしれないですし。
ただ、これはチームメンバーによく話していることなんですけれど、NOT A HOTELのチャットコンシェルジュと話すのが楽しいと言ってくださるお客さまが一定数いらっしゃるんですよね。なかには、私たちと世間話をしてくださる方もいらっしゃって。AIではなく人にしかできないやりとりも確かにある。それが新しい体験価値になるかもしれないですしね。
STAFFTEXT:Kodai MurakamiEDIT/PHOTO:Ryo Saimaru